ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - 交響曲 第6番 ロ短調 「悲愴」
1972年の作品です。
録音は1971年9月16日?21日。
[レコード ライナーノーツより抜粋]
これは、過去4回の「悲愴」のどれもが到達しなかった地点まで行きついたものである。
第3楽章のもの凄さは、あえて空前絶後と言ってしまいたいくらいである。
また、第4楽章では、どんな言葉も無力になるような音楽が展開している。
カラヤンが到達した、再現芸術の究極がここにある。
高みへの指向の絶対的な、同時に絶望的な、ふりしぼった努力。
そして、底なしの転落。音響のどこにも感情的な要素がないにもかかわらず、人間存在の真実を悟らせずにはおかない音の流れ。
時間の経過の恐ろしいほどの具体化。
カラヤンはここで、精神、心、感情、そうしたものとは絶縁し、感覚上の勝負だけで、ついに芸術の境地に達している。
ここには、かつて一度もレコードに録音されたことの無いようなチャイコスキーが実在している。
衝撃を受けるのはたしかだが、その後の満足感は、とてつもなく大きい。